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《黄金の島》 アンリ=エドモン・クロス

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Les Iles d'Or [The Golden Isles]

「海が手前に、そしてマウレの山脈、そして遥かかなたには、そのあまりの美しさに人々が“黄金の島”と呼ぶイエールの島々が見える […]山の連なりには地平線が海岸の曲線に沿って広がり、黄色い砂が光できらきらしている…」

パリのドリュエ画廊で開かれたアンリ=エドモン・クロス(Henry-Edmond Cross)展の序文として、画家の友人であるベルギーの詩人エミール・ヴェラーレン(Emile Verhaeren)が寄せた手紙の中で綴られた描写です。

プロヴァンス最南端の町、イエールの海岸線は実際にイエール諸島の三つの島《ポルクロル島、ポルクロ島、ルヴォン島》に向いてひらけており、黄金の島(リル=ドール)という通称は、灯台の光で結晶片岩が照らされて金色に見えたことに由来していいます。

クロスのこのキャンバスの主題は島ですが、できるだけ他の描写を排除し、色上の光の効果に画家は集中しました。この風景画のエレメントは、砂、海、空という三大色の群れから成り立っています。

後期印象派の技法に習い、クロスは点描の大きさの異なる丸い筆触により、手前から地平線に向かうにしたがって小さくなる点を用いることで、こうして無限な空間のイリュージョンを生み出しています。砂浜と海と空の色帯の誕生な重ね合わせにもとづく構成を持ったこの絵は、当時芸術家の間で高く評価されていた浮世絵の影響も反映されています。

このような毅然とした近代作品は、後期印象派の熱狂的な庇護者であった美術評論家フェリックス・フェネオンのコレクションになった後、1947年にはフランス国家買い上げとなりました。こうして現在はパリのオルセー美術館に所蔵され、日本でもクロード・ドビュッシー(Claude Debussy)生誕150周年を記念した『ドビュッシー、音楽と美術-印象派と象徴派のあいだで』展で出品されました。音楽家と画家が相互に影響し合った当時にドビュッシーの『La mer、海』との親和性を持つと解釈されるこの作品は、クロスの最も愛された作品といえます。