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《樹々の下の薔薇》 ギュスターヴ・クリムト

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Roses under the Trees
この作品は、クリムトが1904年と1905年の夏のバカンス中に訪れていたアッタ―湖畔(オーストリア)のリッツルベルクと呼ばれる城のある島で描かれたものでした。クリムトの作品は230枚のうち50枚が風景画で、そのほとんどが頻繁に訪れたこのアッター湖畔で描かれたので、その風景画でもクリムトの特徴が顕著であるのがこの作品といえます。

キャンバスのほぼ一面が、均一な植物の密集で覆われ、まるでモザイクのような光景に仕上がっています。全体の中で変化となる唯一の要素は、薔薇の木と樹木の幹が形づくる平行線のモチーフだけです。画面の右側の上の端には地平線がわずかに見え、これが奥行きをもたらし、また鑑賞者の目の前に真っ平らに見える葉の群れと対比をなしています。

この作品には、装飾や文様を好んだクリムトの趣味がよく表れています。細かい点の筆触はタピスリーの紡ぎの色の重なりのようにも見え、正方形のキャンバスがいっそう惹き立てます。このような装飾は、クリムトの代表作品《接吻》の人物の下の部分にも登場します。クリムト象徴主義的作品を独自の世界で生み出しウィーン分離派を創立しますが、一方この作品は、全体から穏やかな雰囲気が醸し出されています。依頼元による作品にはない、バカンス中に触れる自然への画家の優しいまなざしが感じ取れます。