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《大きな赤い室内》 アンリ・マティス

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作品タイトルに「大きな」とつく通り大きめのキャンバスに、全体に広がる強烈な赤の色彩が飛び込む作品。一瞬奥行きが分からず平面と思いきや、2枚の絵画がかかる壁は、床と直角に交わり、空間構成をなしています。

アンリ・マティスは生涯にわたり、アトリエや旅先を含めて「室内」をテーマにした作品を描きました。「室内」というテーマは、マティス作品において一つのカテゴリーを築いています。長年さまざまな表現の変遷を経てマティスは「室内」を主題に制作を続け、本作品は晩年のマティスが室内を描いた最後の一点です。晩年、マティスは切り紙による作品が中心となりましたが、そうした表現方法を踏まえた上でのこの作品には、初期の室内を描いた作品よりも、切り絵さながらの即興的な遊びすら感じられます。

画面全体を赤が支配する中、画家はペアとなるオブジェの並置や対比を楽しんでいるようです。2点の絵画、2台のテーブル、2枚の動物の毛皮――カタチや色、モティーフが異なるオブジェが対で描かれますが、色やかたちは異なり、絶妙なバランスで保たれています。動物の毛皮にいたっては、まるで生きているかのようにユーモラスに描かれています。黒い輪郭線は強烈な赤い背景から浮き出るかのように表現されて、全体の絵画空間を構成しています。

マティスは豊かな色彩の中でも特に「赤」を多用した画家でした。しかしながら、マティスがこの作品を制作した時の写真が残っており、それによると、壁の色は当初「赤」ではないことが分かりました。途中で変えたのは、オブジェ固有の色彩を描くのではなく、画家が描く時の情感に響き合う色彩を選んだという見方もできます。「私は色彩を通じて感じます。だから私の絵はこれからも色彩によって組織されるでしょう」とは、「色彩の魔術師」ならではマティスの言葉です。